夢みたもの
航平だ。

咄嗟にそう思った。


携帯を開くと【10:12】の表示。



約束に遅れるなんて‥‥

そう思いつつも、あたしはほっと一息吐くと、携帯を閉じて振り返った。


「もぅ‥遅いよ、航平!?」




「‥‥?」


「どぉも」


そう言って笑いかけてきたのは‥‥

航平じゃなかった。



「雪村ひなこちゃん‥だよね?こんなトコで何してんの?」


目の前に立っている目つきの鋭い男が、あたしの顔を覗き込む。


「もしかして、約束すっぽかされた!?」


頬のニキビ跡が目立つ、もう片方の男が鼻にかけるように笑った。



ニヤニヤと厭らしい笑い方をする2人。

あたしを足先から頭まで、舐めるように眺めると、目つきの鋭い男が、さらに目を細くして笑った。


「俺達、同じ中学だったんだけど‥‥覚えてないかなぁ?」

「ま、あんま行ってなかったけど」

「でも、ひなこちゃんの事は知ってるよ?可愛くて目立ってたもんね」


2人が動く度、煙草の匂いが鼻につく。

不快感に襲われて、あたしはじりじりと後退った。


「あ、ちょっと逃げないでよ!?」


目つきの鋭い男が主導権を握っているらしい。

男が軽く顎を動かすと、もう片方の男があたしの背後に回り込んだ。



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