夢みたもの
「あぁ〜!?ひなこちゃん‥‥また園長先生に甘えてるっ!!」


大体いつも3ヶ月毎にやってくる、カズミと呼ばれる子があたしを指差した。


「ズルイよ!ねぇ‥園長先生、カズミの事も抱っこして?」

「良いよ。ただ、今はひなこが泣いてるから‥、ちょっと待ってな?」

「えぇ〜!?」


甘えるカズミを横目に、幼いあたしは抱き抱えられた腕の中で必死にもがいた。


「下ろして‥!!」

「‥‥」


腕をすり抜けてストンと床に降り立つと、カズミが待ってましたとばかりに園長の腕にしがみ付く。


「はい!じゃぁ‥次はカズミの番だよ?」

「仕方ないなぁ〜‥」


そのやり取りを聞きながら、幼いあたしはそっと2人を盗み見る。


大丈夫。

もう‥‥見てない。


ほっと胸を撫で下ろした。


カズミはあの人の事が大好き。

ここに来る度、他の誰より甘えている。

それを見る度‥‥吐きそうになる程、気持ちが悪い。

この感覚は、大きくなった今も変わらない。


どうして

どうしてあの人は、カズミを好きにならないんだろう‥‥

あたしの事なんて、放っておいて欲しいのに。


嬉々とした声を上げるカズミ。

その腕や足には、赤や紫色のあざがある。


また‥前と違う処だ‥‥

そう思いながら、幼いあたしはその場から逃げ出した。



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