夢みたもの
「迎えに来たよ、ひなこ」


幼いあたしの前に進み出た園長は、口元に笑みを浮かべて幼いあたしを見つめた。


「さぁ‥帰ろう?」


「‥‥」


園長が近付いた分、幼いあたしは後退る。

ユーリが引きずられるような形で後に続いた。


「ひなこ‥‥この人 誰?」


「知ってる人?」そう付け加えて、ユーリは園長と幼いあたしに交互に視線を送る。


「ひなこの親みたいなものだよ。君は、ひなこがお世話になっている家の子だね?」

「‥‥」

「ひなこが世話になったね。この子は‥どうも逃亡癖があるみたいなんだ。でも、私が迎えに来たから‥もう迷惑をかける事はしないよ」


園の子供達に言い聞かすように、園長はユーリにそう告げると、あたしに向かって手を差し出した。


「さぁ、ひなこ」

「‥‥」

「おいで」

「‥‥」



動けなかった。


施設に連れ帰られる。

また‥、あの悪夢のような日々が始まる。

そう思うだけで、恐怖で足がすくんだ。


「ひなこ?」


首をかしげるユーリ。

その手を強く握り締めて‥‥幼いあたしは、ただ首を横に振る事しか出来なかった。



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