夢みたもの
本当に

本当に幸せだった。


ユーリと一緒に居ると、汚れた自分が浄化されていくような気さえした。


ずっと怖かった夜は‥‥

ユーリと枕を並べて眠る穏やかな時間に変わって‥‥、いつの間にか、ウサギのぬいぐるみは涙を拭わなくなった。



あの日までは。



そう、あの日まで‥‥

幼いあたしは、人生で初めて手に入れた幸せを噛み締めていた。

この幸せが続けば良いと‥‥

そんな淡い夢を抱きつつ。



━・・━・・━・・━


場面が変わる。


ふと気付くと‥‥目の前に並木通りが広がっていた。


歩道を歩く2人の姿。

仲良く手を繋いで、楽しそうに笑う声が辺りに広がっている。


「帰ったら‥ピアノ教えてあげるね、ひなこ」

「うん」

「僕、ひなこもピアノの才能あると思うんだ。練習して‥2人で弾けるようになったら楽しいよ、きっと」


楽しそうに笑うユーリに、幼いあたしが笑い返す。



その時。


街路樹の影に立つ人影が目に入った。


「‥‥!?」


幼いあたしの顔が‥‥みるみる固く‥凍ったように動かなくなる。



「ひなこ?」

「‥‥」

「どうしたの?」


不思議そうに首をかしげたユーリに、幼いあたしは小刻みに首を振って後退りする。


視界に入った人物。

そこに居たのは‥‥

一番会いたくない相手だったから。



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