夢みたもの
「もう良いだろう?」


勝ち誇ったようにそう言うと、園長は幼いあたしに再度手を差し出す。


「さぁ‥ひなこ?」

「‥‥」

「分かってる筈だよ?‥おいで」

「‥‥」

「ひなこ」



有無を言わせない威圧感。

真っ直ぐ向けられた射るような視線。

凍るように冷たい目の奥に、汚れた欲望をチラチラ覗かせる。



‥‥怖い。


体がすくむ。



結局‥‥

自分は園長から逃げられない。

この人はきっと、何処まででも追い掛けてくる。

そして

そして自分は‥、この人に怯えながら生きていくしかない‥‥

そう思い知った。



「ひなこ‥駄目だよ‥!!」


ユーリが繋いだ手を強く握り締めた。


「ひなこは‥僕と一緒に居なくちゃ。僕がひなこをもっともっと幸せにしてあげるから」


「‥‥ユーリ‥」


喉に張り付いたように出なかった声が、ようやく音を発した。


「ユーリ‥、あたしね‥‥」

「ひなこ」


幼いあたしの言葉は、その途中で園長に遮られる。


「さぁ‥私達の家に帰るよ?ひなこ」

「‥‥」


無言の圧力。

それに肩を震わせた時だった。




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