夢みたもの
階段を上がるにつれ、ピアノの音は大きくなる。


あたしは、ピアノの音に全神経を集中して、自分の足音にさえ注意しながら音楽室に近付いて行った。


頭は今も混乱してる。


・・・・懐かしい・・・

この曲を聴いているとそう思うのに、何処で聴いたのか思い出せない。


一体誰が、この曲を弾いているんだろう?



ワックスが掛かった廊下は、歩く度にキュッキュッと高い音がする。

出来るだけ音を立てないように気を付けながら、あたしが音楽室にたどり着いた時には、ピアノは次の曲を奏で始めていた。


今度の曲は、有名なピアノソナタ。

あたしは音楽室のドアに張り付いて聞耳を立てた。


ここまで来たものの、音楽室には廊下側に窓が無い。

だから、こっそり覗く以外、中を見る事は出来なかった。


どうしよう。

あたしは、中の様子を伺いながら、そっとドアに手を伸ばした。


ほんの少し覗くだけ・・・だから大丈夫。

どうか、気付かれませんように。


胸の鼓動が耳元で聞こえる。


緊張を解く為に大きく深呼吸をすると、あたしはドアに掛けた手に力を込めた。


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