夢みたもの
「ひなこ?」

「・・・きゃっ!!」


突然名前を呼ばれたあたしは、驚いて声を上げるのと同時に、ドアから手を離した。

不意の事だったから、手がドアに当たってガタンと大きな音を立てる。


その瞬間。

音楽室からピアノの音が鳴り止んだ。


「・・・あ・・」


あたしは叱られた子供のように、肩をすくめて目を瞑った。


最悪。


音楽室からは物音一つしない。


まるで、最初から何も無かったかのように、校内で聞こえてくるのは、運動部の筋トレの掛け声だけになった。


「ひなこ 何してるの?こんな処で」


声の主は、ジャージ姿にスポーツバックを肩に掛けた航平。

心なしか、少しだけ不機嫌そうな顔で、あたしを見つめている。


「携帯に何度連絡しても出ないし、図書室に荷物は置きっ放しだし‥」

「あ、・・・ごめん。携帯、置いてきちゃった」


呟くように言うと、航平は呆れ顔で深いため息をつく。


「心配したんだよ?」

「ごめんね」


あたしが小さくなって謝ると、航平はクスリと笑ってあたしの頭を撫でた。


「練習終わったから、帰ろ?」


何となく気まずくて、あたしは航平の言葉に黙って頷いた。


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