夢みたもの
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それから2日後。

あたしは退院した。



「おかえり、ひなこ」

「お父さん‥」


平日だというのに、父が玄関先まで出迎えてくれた。


「元気になって良かった」

「心配かけてごめんなさい」


頭を下げたあたしに、父は小さく笑った。


「元気になったならそれで良い。まぁ‥、今度心配をかけられるなら、別の事の方が良いな」

「お父さんね、毎日お見舞いに来てたのよ?」


荷物を抱えた母が、あたしの背後から言った。


「‥え?」

「でも、いつもそっと様子を見て帰っちゃって‥‥」


「照れ臭かったんだって」そう付け加えて母は笑う。


「父親なのに変よね」

「‥‥」

「今日だって、雅人の世話にかこつけて休んじゃって」

「今日は研究室に顔を出すだけだったから‥‥」


そう言って、誤魔化すように玩具で遊ぶ雅人をあやしに行った父は、照れ臭そうに頭を掻いた。


その様子に、胸の奥が温かくなる。


「ありがとう」


心からそう言えた。


「お父さんもお母さんも‥‥本当にありがとう」



この両親に引き取られて良かった。

この家族の一員として、今、自分がここに居る事が嬉しい。



やっと居場所を見付けた気がした。



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