夢みたもの
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「おかえり」


夕方。

学校帰りに立ち寄った航平は、嬉しそうに笑ってそう言った。


「家に居るひなこを見るの久しぶりだ」

「航平が家に来る事自体、久しぶりじゃない?」


小さく頷いた航平は、課外授業をしていた時からの定位置に腰を下ろす。


「久しぶりの家はどう?」

「うん‥幸せ味わってる」


あたしはそう言って笑った。



今までの分をこれから取り戻す。

それは、まだ決して遅いわけじゃない。



「学校はいつから?」

「明日」

「そっか‥、じゃぁ、ひなこに勉強教えるのも今日が最後かな‥?」


葵から預かってきたノートをテーブルに置きながら、航平は寂しそうに笑った。


「明日から、ひなこは叶のお見舞いで忙しいでしょ?」

「‥え?」

「お見舞い‥行かないの?」

「ぅうん‥‥行く‥けど」


「俺‥独占欲強いからさ‥、やっぱ気になるよ」


少し頬を染めて、悔しそうに苦笑する航平。

その表情に、あたしの胸がチクリと痛む。


「やだな‥‥教えて貰わないと困るよ」

「‥‥」

「航平に教えて貰わなかったら、授業に付いていけなくなっちゃうもん」

「でも‥」

「前みたいに、また夜に教えて欲しいな‥?」

「‥‥」

「‥‥駄目?」


あたしは首をかしげて航平を見た。


いつも、打てば響くように返ってくる航平の返事が遅い。

その事に不安を感じ始めた時、航平はあたしの頭をくしゃくしゃに撫でてニッコリ笑った。


「駄目な訳ないよ。喜んで」



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