夢みたもの
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「それにしても、本当に良かったわねぇ‥‥」


ユーリが目覚めてから1週間。

ほっと息を吐きながら、美野里さんが何度目か分からない言葉を口にした。


「目が覚めたら声も出るようになってるなんて‥、奇跡だと思うわ」

「‥‥」

「しかも良い声だし」


「美野里さんってばそればっかり」


毎日のように届けられる見舞い品の整理をしていたあたしは、思わず苦笑して顔を上げた。


「それ‥会う度に聞いてる気がするんですけど‥?」

「あら‥良い事は何度言ったって良いじゃない?」

「まぁ‥」


そう言いながらあたしが視線を送ると、視線の先のユーリが読んでいた本から顔を上げて小さく笑った。


「色々迷惑かけてすみません」

「やだ、何言ってるの!?そんな事 気にしなくて良いの」


美野里さんはそう言って、ユーリの顔を覗き込んだ。


「何か‥声が出るようになってからの悠里君はよそよそしいわ」

「そんな事は‥」

「意思の疎通がしやすくなるのは、遠慮もしやすくなるって事なのかしら‥?」

「‥え?」


思わずユーリが苦笑したその時。

病室のドアが開いて、賑やかな声が聞こえてきた。



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