夢みたもの
「調子はどうだい?」


そう言って病室に入ってきたのは、崇さんを先頭に、鞠子と葵、そして‥‥航平だった。


「え‥何で‥!?」


思わず目を見開いて航平を見た。

声が上ずる。

ユーリの意識が無い時に一度だけ来た事があるけれど、航平がユーリの病室に来るなんて意外だった。


でも‥、別にやましい事をしている訳じゃないのに、ユーリと一緒に居る処を航平に見られるのは気まずい。


もちろん、その逆もそう‥‥


あたしはぎこちなく航平から視線をずらした。

視界の端に見えるのは、同じく気まずそうな表情の航平と、無関心を装った葵。

そしてユーリは、戸惑った表情を一瞬見せつつも、皆を笑顔で迎えた。


「具合はだいぶ良いよ」

「そっか‥良かった」


嬉しそうに頷いた崇さんの隣で、鞠子が目を輝かせる。


「叶君、ホントに喋れるようになったんだねぇ〜‥」

「おかげさまで。何度もお見舞いに来てくれた‥って聞いた。ありがとう」

「お礼なんて良いよぉ‥」


頬を染めて笑う鞠子に苦笑しながら、葵が手にしていた袋をあたしに差し出した。


「これはお見舞い。一応、日持ちする物を選んだつもりだけど」

「ありがとう」


お礼を言って受け取ったあたしに、葵がずいっと顔を寄せる。

そして、あたしの耳元で小さく囁いた。


「こんなつもりじゃなかったんだけど‥‥悪かったわ」

「‥え?」

「堤君を連れて来る予定じゃなかったのよ。それなのに‥‥」


ため息を吐きながら葵は鞠子に視線を送る。


「今は叔父様に夢中で‥、他の事を考える余裕が無いみたいね」



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