夢みたもの
結局。

病室に居る間に航平が声を発したのは、崇さんと美野里さんに話しかけられた時だけ。

航平もユーリも‥‥お互い話そうという素振りも見せなくて、あたしはハラハラしながら時間が過ぎるのを待った。



「意外と子供ね」


美野里さんが帰り際に用意してくれたシュークリームを口に運びながら、葵がポツリと呟いた。


「普段愛想の良い人が黙ると、なかなかの迫力‥威圧感があるわ」

「‥‥」

「まぁ‥彼の場合、ああやって黙って‥大人と接してる時の方が無理をしてない気もするけど‥?」


かなり鋭い観察眼に、あたしは黙ってシュークリームを口に運んだ。



航平は特別。

ギフテッドという特殊な存在で、本当はきっと、普通の高校生で居る事の方がおかしいんだと思う。

崇さんや美野里さんと話す時の表情は、確かに高校生らしくない時もあって‥‥

普段と違う雰囲気に、あたしは航平を遠くに感じた。



「航平は、大人と接するのが上手いから」


少し俯きがちにそう言ったあたしに、葵は小さく笑う。


「大丈夫よ、心配しなくても」


そして、鞠子と話をしているユーリをチラリと見て、葵は声を落とした。


「だって、2人は誰より分かり合えてる筈よ?」

「‥‥」

「そんな情けない顔しないの」


そう言って笑う葵に、あたしは小さく笑い返した。



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