夢みたもの
「‥でも‥‥」


また、頭が混乱する。

佐知先生は何て言った?



知ってた‥?

‥‥気付いてた?



あたしは信じられない思いで佐知先生を見つめた。


「え‥でも‥、でも、それじゃ‥」


どうして?

何で?

疑問が頭の中でぐるぐる回る。


「どうして‥?」

「‥‥」

「気付いてたなら‥‥どうして助けてくれなかったんですか‥?」


「ごめんなさい」


ぽろぽろと涙をこぼしながら泣き崩れる佐知先生を、あたしはただ‥じっと見つめた。



助けて欲しかった。

怖くて

苦しくて


逃げても逃げても‥‥必ず捕まる。

逃げ場なんて、どこにも無かった。

一生このままなんだって‥‥あたしは一生、この恐怖を抱えたまま生きていかなくちゃいけないんだって‥‥そう思ってた。


それなのに


気付いてた‥なんて。

手を差し伸べてくれなかったなんて‥‥


ずっと‥助けを求めていたのに。



「‥‥ごめんなさい‥」


目の前で涙を流す佐知先生に、かける言葉は見付からない。

ただ‥、悔しさと、憤りを感じるだけだった。



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