夢みたもの
「亡くなったのは‥昨年のクリスマスイブだったわ」

「‥‥え?」


僅かに声を震わせてそう言った佐知先生を、あたしは驚いて見つめた。



だって、その日は‥‥

あたしと航平の約束の日で、ユーリとあたしが事故に遭った日だったから。



「そう‥凄い偶然よね」


佐知先生は、あたしの様子を伺うように園長の話をした。



園長は、数年前に癌の摘出手術をしてから、入退院を繰り返していた事。

園の運営は、今は佐知先生に任されている事。


園長がずっと‥ずっとあたしに会いたがっていた事‥‥

佐知先生は、それを申し訳なさそうに付け加えた。



「堤さんから連絡を貰って、そこまで持てば‥最後に一目だけでも会えたらって思ったんだけど‥‥間に合わなかった」

「‥‥」

「でもまさか‥亡くなったその日にひなこちゃんが事故に遭ったなんて‥‥」


そこで言葉を切った佐知先生は、小さくため息を吐いて苦笑した。


「話を聞いた時、園長先生がひなこちゃんを連れて行こうとしてるんじゃないか‥って思ったわ」

「‥‥」


「ごめんね‥ひなこちゃん」


目を伏せた佐知先生は、そのまま深々と頭を下げた。


「本当に ごめんなさい」

「‥え?」

「分かってた‥うぅん、気付いてたの」

「気付いてた‥?」


あたしの言葉に頷き返すと、佐知先生は泣きそうな表情で口を開く。


「ひなこちゃんに対する、園長先生の異常な愛情も、行動も‥‥気付いてたのに、私は助けてあげられなかった」

「‥‥」

「ごめんなさい」


佐知先生はそう言って、何度もあたしに頭を下げた。



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