夢みたもの
「でも本当に‥、まさかこんな日がくるなんて‥‥夢にも思ってなかったわ」


母は改めてそう言うと、あたしの肩を抱き寄せてその身を寄せた。


「ずっと‥不安だったの」

「‥‥」

「雅人を妊娠した時‥‥ひなこの心が離れていくのを感じたわ。でも、雅人の手前‥そこで母親だとは名乗れなかった。それに、崇君と一緒に居るひなこを見た時も‥‥怖かった」

「‥‥」

「ひなこには本当に、ずっと、寂しい思いをさせてしまって‥‥」


「そんな事ないよ‥?」


あたしは、母の肩に頭をもたげて小さく笑った。


「今だから思うの。この家に住むようになってからの私は、凄く幸せだった‥って。きっとこれからもね」


「‥‥ひなこ‥」


母の声に涙が混じる。


「だから‥もう謝ったりしないで?あたしは幸せだから」


あたしは母を振り仰いで笑いかけた。



「ねぇ‥お母さんと崇さんの話も聞かせて?」

「‥‥」

「ずっと好きだった‥?」


あたしの言葉に、母は小さく頷いて苦笑した。


「そうね‥好きだったわ。優しくて、明るくて、真っ直ぐで‥‥一緒に居ると元気になれた」

「へぇ‥」


今の崇さんからは想像出来なかった。



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