夢みたもの
「それじゃ‥お母さんは、お父さんのそんな処に惹かれて結婚したの?」

「そうね‥」


突然話題を変えたあたしに、母は小さく笑って首をかしげた。



「最初は‥結婚するつもりなんて無かったわ。実際、一度断ったもの」

「‥え!?」


驚いたあたしに、母は苦笑して首を横に振った。


「実の子を手放した私が、人並みの幸せを手に入れるなんて、そんな事‥許される事じゃない‥‥ずっとそう思ってたの」

「‥‥」

「でもお父さんは‥‥」


そこまで話した母は、その時の事を思い出したのか、懐かしそうに目を細めた。


「お父さんは、全てを知った上で、その全てを受け入れて、もう一度プロポーズしてくれたの」

「‥‥」

「『早く迎えに行こう。そして、一緒に家族として暮らそう』‥‥そう言ってくれた事が‥凄く嬉しかった」

「‥‥」

「そのおかげで、退院してすぐ‥ひなこを迎えに行く事が出来たの」

「そう‥‥だったんだ」

「素敵なお父さんでしょ?」


そう言って微笑んだ母に、あたしは小さく笑って頷き返した。



父がそんなに気にかけてくれていたなんて、今まで知らなかった。

あたしが母と再会出来たのは‥‥父の後押しがあったから。

その後押しが無ければ、あたしはきっと、今‥ここに居なかった。



「そっか‥そうだったんだ‥‥」


あたしはそう呟いて、ほっと息を吐いた。



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