夢みたもの
「‥‥え‥!?」


言葉が出てこない。

鞠子の言葉がすぐに理解出来なくて、あたしは呆然と鞠子を見つめ返した。



「‥帰る?」

「今、職員室で先生が話してるの聞いたの。今学期で帰るから‥退院しても数日しか登校しないだろう‥って」

「‥‥」

「あぁ‥、やっぱりひなこは知らなかったのね」

「‥‥!?」


その声に振り向くと、葵が苦笑してあたしを見つめていた。



「知ってたの‥?」


小さく頷いた葵は、立ちつくしたままの鞠子を椅子に座らせると、小さくため息を吐いてあたしに笑いかけた。


「彼はね、最初から半年間だけの予定で編入してきたのよ」

「半年?」

「そう。私も受け入れ時に先生から聞いた話だけど。彼‥どうしてもこの学校に来たいって‥熱心に連絡してきたそうよ?」

「‥‥」

「普通なら受け入れたりしないわ。でも、幸いこの学校には特クラがあった。彼のピアノの才能が他の生徒の刺激になれば‥‥って事で編入を許可されたのよ」

「でも、だって‥そんな事一言も‥‥」


あたしはそう呟きながら、何度も首を横に振った。


ユーリが居なくなるなんて‥‥

そんな事、信じられない。


やっと‥

やっと、新しい一歩を踏み出したばかりなのに‥‥




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