夢みたもの
「あ、ひなこ!!どこ行ってたの!?」

「ごめん 鞠子」


頬を膨らませて腕を振っている鞠子。

慌てて駆け寄ると、鞠子はあたしの腕に腕を回した。


「勝手に居なくならないでよぉ‥」

「うん‥ごめん」


あたし以上に式の間泣きじゃくっていた鞠子の目元はまだ赤い。

その目をくしゃくしゃにして笑うと、鞠子は後ろから付いてくる航平をチラリと見てあたしに耳打ちした。


「ねぇ、ひなこ?やっぱり航平君は凄いねぇ‥」

「え?」

「ひなこの居場所、すぐ見付けちゃうし」


「あぁ‥それに」そう付け加えると、鞠子は不満そうに少し眉根を寄せた。


「相変わらずモテモテだよ?さっきも2年の女子に囲まれてた」

「‥‥」


「来月から‥ひなこの気苦労は今以上ね」

「‥葵‥」


いつの間にか背後に立った葵がニヤニヤ笑う。

その視線を航平に向けると、葵は楽しそうに笑いかけた。


「あぁ‥でも、気苦労が増えるのはこっちの方かしら?」

「‥‥」

「高校では上手くガードしてたみたいだけど‥‥これからは守りようが無いものね?」

「ホント‥一之瀬さんは相変わらずだなぁ」


卒業証書の角で頭を掻くと、航平は肩をすくめて苦笑した。



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