夢みたもの
はぐらかされた感じで納得出来なかった。


「どうして?」

「何が?」

「何で航平の部屋じゃ駄目なの?」


ノートを書き移している航平の顔を覗き込むと、航平は小さくため息を吐いてあたしを見る。


「ひなこ 出窓伝って移動出来ないでしょ?」

「出来る」

「嘘ばっか。危ないから駄目」


航平は「この話はおしまい」と言うと、英語のノートを閉じてあたしに返してくる。


いつもいつも、あたしの上をいく航平。

幼い頃から一緒に居るのに、時々あたしは、航平の事を殆ど知らないんじゃないかと思う事がある。


「航平ってズルイ」

「ズルイ?」

「そうだよ。いつも何でも知ってる風で、あたしより前を歩いてる」


口を尖らせてそう言うと、航平はあたしの顔を見て吹き出した。


「ひなこ 可愛い顔が台無しだって」

「可愛くないもん!」


また誤魔化そうとしてる。

そう思ったあたしは、頬を膨らませて横を向いた。


「可愛いよ?」


優しくそう言うと、航平は、あたしの頭にそっと手を置いた。


「ひなこは俺の特別だもん」

「特別?」

「そう」


頭に置いた手をずらして、航平は、背中まで伸びたあたしの髪の一房を頬の辺りでクルリと指に巻き付けてニッコリ笑った。


「ひなこは大切な幼なじみだから」


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