夢みたもの
『誰か助けて!』


昼間、頭の奥で響いた声がまた聞こえてきそうな気がして、あたしはそれを打ち消すように、頭を振って強く瞼を閉じた。



心の奥がザワザワと波立つ感じで落ち着かない。

鼓動が大きくなる。



「ひなこ 大丈夫?」

「うん・・・大丈夫」


あたしはマグカップを持つ手に力を込めると、肩で大きく息を吐いた。


少し鼓動が早いけれど、頬が引きつってるかもしれないけれど・・・大丈夫。

ちゃんと笑える。


思い切って顔を上げると、あたしは航平に笑いかけた。


「大丈夫だよ、心配しないで?」

「ごめん。嫌な思いさせた」


航平はまた、済まなそうな顔をした。


「やだなぁ そんな顔しないでよ?航平らしくない。本当に平気だから」


あたしはそう言うと、航平に日本史のノートを突き付ける。


「ほら、早く写して?今日は他に、現文と数学もあるんだから」

「・・・・・」

「ね?」


航平の顔を覗き込むと、航平は少しだけ笑ってノートを受け取り、あたしの頭にポンと手を置いた。


「了解。じゃぁ、カフェオレのおかわりくれる?」

「いいよ、待ってて」


また、いつも通りの雰囲気に戻った。


あたしはその事に安心して一息吐くと、空になったマグカップを2つ持って部屋を出た。


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