夢みたもの
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「あ、お父さん。お帰りなさい」

「あぁ、ただいま」


リビングに行くと、父がテレビと新聞を交互に見ながら、遅い夕飯を食べている処だった。

母親は、雅人を寝かしつけているのかリビングに居ない。

あたしは少し気まずさを感じて、カフェオレを作りながら父に話しかけた。


「今日は随分遅かったね」

「あぁ・・・今日中に片付けたい書類があってね。ひなこは、今日も航平君と勉強中かな?」


新聞から僅かに視線を上げて父はあたしを見た。


「うん」

「そっか、相変わらず仲が良いな。いい事だ」

「うん」


他に話す事が思いつかない。

自然とあたしと父は黙り込んだ。

リビングには、ニュースを読み上げるアナウンサーの声だけが響く。


「じゃぁ、あたし部屋に戻るね」

「あぁ・・・」


あたしはカフェオレを作り終えると、気まずい雰囲気の立ち込めたリビングを後にした。



大学で西洋史を教えている父は、普段から口数が少ない。

それに加え、あたしに対して父は、昔から少し距離を置いている。

だから2人きりになると、お互い意識し過ぎて気まずい雰囲気になってしまう。



その原因は あたし。


あたしは階段を上がりながら、今日一番の大きなため息を吐いた。



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