夢みたもの
「おまたせ」


ドアの前で深呼吸をすると、あたしは明るい声を出して部屋に入った。


「もう終わった?」

「ん、あとは現文だけ」

「そっか。じゃぁ、小休憩どーぞ?」


マグカップを航平の手元に置くと、あたしは明日の予習をする為に、英語の教科書を開く。

すぐに分からない単語にぶつかって、辞書をパラパラとめくった。


「あれ?ひなこ 明日の英語、当ってるんだっけ?」


あたしの手元を覗き込みながら、航平はそう言って温かいカフェオレを口に運ぶ。


「うん。あたし英語苦手だし、予習しておかないと」

「ふぅん・・・教えてあげよっか?」


航平は頬杖を付いてニッコリ笑った。


「え、いいよ」


本当は教えて貰いたいけれど、教えて貰ったら負けだ。

自分でも意地を張ってると思うけれど、あたしはプイッと横を向いた。


「手伝って貰わなくても出来るもん」

「ふぅん?・・・でもさ、その文法の使い方 間違ってるよ?」

「え?」


あたしは慌てて、訳を書いたノートを見た。

顔が熱くなる。


「ね?だから教えてあげるって。ほら ノート貸して?」

「・・・・」


あたしは言われるがまま、手にしたノートを航平に手渡たす。


いつもながら、航平の手の上で踊らされる。

悔しいぐらいに完璧な航平だった。


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