夢みたもの
「駄目だ、思いつかない」



30秒ぐらい眉根を寄せていた航平。

すぐに息を吐いてあたしを見た。



「おばさんに特別って言われるような事、何にも無いよ?」

「そうなの?」

「大体 どういう展開でそんな話になった訳?」



あたしがピアノの事を含めて経緯を話すと、航平は「ふぅん」と言った後に苦笑した。



「おばさん 俺の事買いかぶり過ぎだよ。俺 別に特別じゃないし」

「そうなの?」

「そうなの?って・・・俺の事、一番よく知ってるのは ひなこでしょ?」

「う・・・ん」

「何か歯切れの悪い返事だなぁ」

「別にそんな事ないけど」



時々、航平の事を謎に思ったりするけれど・・・という言葉は、とりあえず心の中に止めておく。



「そんな事より、ひなこは随分、昼間のピアノにこだわるね?」



温くなったに違いないカフェオレを口に運びながら、航平はあたしにそう言った。



「え?あぁ・・うん」

「そんなに良い曲だったの?」

「うん。それに・・・昔どこかで聴いた事がある気がするの」

「テレビとか?」

「有名な曲じゃないの。クラシックとも違うし・・・お母さんも知らないって」

「ふぅん?」

「誰が弾いてたのかなぁ・・・」


手にしたマグカップの縁を見つめながら、あたしはポツリと呟いた。


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