あなたに呪いを差し上げましょう
男性とはいえ、公爵家の庭でだれともわからない相手に自分から声をかけられること。

自分の名前なのに、まるで言い慣れていないもたついた口調。


宴が終わるまで、きちんと最後までいなければいけない事情。


最上位の来賓なのだから当然である。

王家との信頼に関わる。いなかった時間は薔薇園にいたことにして、すばらしい薔薇園でした、と言っていたらしいけれど。


うつくしい髪と目。夜鳴鳥。店名の書いていない菓子の白箱。


貴族名鑑。地方貴族と頻繁に会っていること。

うかがえる受けた教育のよさ。


本を気軽に買えること。外国に行ったことがあること。ある程度その言葉を話せること。


剣舞を見せてほしいと頼まれたことがあるのは、騎士団の公開演習の演目に、剣舞があるからではないかしら。

華やかでとても盛り上がるのだと書いてある本を読んだことがあるもの。


星の名に知り合いの名があることは決定的だった。

先人が当時の名門貴族からとった名前は、いまはもう、王族に縁のある家々にのみ、ごくわずかだけが残っている。


仲間が、ルークさまを守って斃れたこと。眠れない理由はその腰の剣にあるのでしょう。


友好条約を結ぶという策はだれにでも立てられるかもしれないけれど、自分が行うことを前提にして話すのは、限られたひとにしかできない。


そもそも、公爵領の検門を抜けていることが——馬でわたくしの屋敷に頻繁に来られることが、一番おかしいのよ。

もう砦の門を閉めているであろう夜遅くに、領内に入れるほどの権力者だということだもの。


だから、父ははじめからこのお方がどなたかわかっていたのでしょうね。

やんごとなきお方が忌子である娘のもとに足しげく通うのを、いったい、どのような顔で許可していたのかしら……。


日ごとにぽろりぽろりとこぼれるかけらが、ルークさまの身分を確信させていった。


そのたびに戒めて、終わりにしようとして。でも結局、名残惜しくて、終わりにできなかった。
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