あなたに呪いを差し上げましょう
それからは、ただひたすらに祈るしかなかった。


ルークさまが今回のいくさで勝てなければ、わたくしが生贄になる。そういうことだった。


……ひどいひと。お恨み申し上げます、と呟いた声さえ届かぬまま。


ルークさまは上手に宣伝もしていったらしい。英雄のハンカチに刺繍したということで、わたくしの刺繍は少し価値が上がった。

名前を隠したままなせいで、上がってしまった。


過去も、また未来も、あの方には消え果てて。


ルークさまを取り巻く環境は混迷を極めて厳しさが増しているのに、わたくしひとり、のうのうと生きている。ルークさまがくれた、安定した生活だった。


あのうつくしいひとを思うと、水辺に横たわる草のようにまつげがぬれてくる。

わたくしは、こういうときにこそ無力なのだ。


貴いお方は、抱えきれないほどの財と権力を与えられる代わりに、この世でも随一の重圧や不自由、血なまぐささと、隣合わせで生きることを決められる。ひとつの間違いも犯せずに。


王族には清濁併せ呑むだけの度量が求められるという。


呪われ令嬢としてなら構わない。でもわたくしを、あのやさしいひとに、アンジェリカとして使わせたくなかった。
< 79 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop