おうちかいだん
顔を綺麗にしてもらうはずが、いつの間にか米津さんにメイクをしてもらっている。


「ねえ米津さん」


「うん?」


「もしかして米津さんは、私に話したいことがあったんじゃない? たとえば怪談とか」


本来ならありえない話の流れだけど、そんな流れは今まで嫌というほど起こってきた。


だから、多少無理矢理でも、話すつもりなら話してくれるだろう。


「はぁ? こんな時に怪談? ちょっと何言ってるか分かんないけど、猥談ならいくらでもするよ」


……違ったか。


でも、この感覚……何か思い出せそうなんだけどな。


今まで以上に、とても大事なことを。


「ああ……もう、藤井さん本当に綺麗。キスしたいけどメイクが崩れると嫌だし。そうだ、舌を出してよ。藤井さんの舌をチューチュー吸うので我慢するから」


「米津さん……おかしな性癖してるんだね。今のはさすがにちょっと引いたよ」


思ってはいても、普通口には出さないと思うんだけど。

どうも私が出会う人は自由というかクセが強い気がする。


「え、ええ……引かないでよ。それならいきなり怪談を求める藤井さんも、なかなかおかしいよ? あ、でも……ひとつだけ知ってるかな。こんな風な、お化粧の怪談を」


米津さんが話し始めたのは、太陽が沈んで空が薄暗くなり始めた時だった。
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