おうちかいだん
「ふーんふんふーんふん……んー」
和室の壁際に置かれた三面鏡。
制服を着た私は薄いピンクの口紅を付けて、鏡に映った自分をまじまじと見ていた。
数分前の私とはまるで別人の私がそこにいて、思わずため息が出てしまう。
「お母さんの見よう見まねだけど……それでも変わるもんだね。綺麗……」
自分で自分を褒めるなんて気持ちが悪いけど、そもそもが自分じゃないみたいだから、他人を褒めているような感覚になっている。
私の中で、鏡に映ってるのは私じゃないんだよね。
お母さんが使わなくなって、そのままになっていたメイク道具を、興味本位で使い始めたのがきっかけだった。
最初は瞼を二重にするくらいだったけれど、やっているうちに楽しくなって、マスカラをつけ、アイラインを引いて。
今では顔で化粧品が触れていない所はないくらいにまでメイクを楽しんでいた。
「もっと綺麗になりたいな……どうすれば良いんだろう」
正面、左、右と、三面鏡に映る自分を確認しながらそう呟いた時だった。
「私の言う通りにすれば綺麗になれるわよ」
右の鏡に映る私が、フフッと笑ってそう呟いたのだ。