おうちかいだん
「ミサ……ミサ……どこにいるのよ。私を助けてよ」


鏡は見たくない。


いや、鏡だけじゃなく、私の姿を映すものは何だって見たくない。


だからまるで呪文のように、俯いてブツブツとそう呟き、家の中を歩き回った。


もう限界だった。


鏡を見れば、気持ちの悪い不気味な顔が映り、メイクが上手く出来ないから学校でもいじめられている。


おじいちゃんにも相談出来る状況じゃなくて、私はどうすればいいかがわからなくなっていた。


「ねぇ……ミサ。お願い……私を助けて」


「……可哀想に。とうとう頭がおかしくなってしまったのかのう……」


居間で新聞を読むおじいちゃんにも、そんなことを言われるようになってしまった。


きっと私は今、はたから見たらとんでもない姿なのだろう。


そして結局行きつく先は、お母さんの部屋の三面鏡。


自分の姿を鏡に映したくないから、その横で膝を抱えてうずくまる。


「ミサ……お願い……」


今にも消えそうな声でそう呟いた時だった。









「私がいない間に、随分おかしなことになったみたいね。あ、ダメよ。鏡は見ないで」










その声が聞こえて、私の心に光が射し込んだような、晴れやかな感覚が広がったのを感じた。
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