おうちかいだん
なんで夜にトイレに起きただけでこんなことに……。


どうして私は殺されようとしているの?


何が何だかわからないまま、瞼を閉じようとしたその時だった。








「さっちゃん? こんなところで何をしとるんじゃ? トイレなんかで寝てると風邪をひいてしまうぞい」








突然聞こえたおじいちゃんの声に、私は我に返って、慌てて手で喉に触れた。


「ひやっ……はぁっ! はぁ……はぁ……あれ? 何ともない」


どれだけ触っても喉は切られてなくて、あの異様な風貌の人も幽霊の姿も消えていたのだ。


トイレに起きたのか、おじいちゃんが不思議そうに私を見て首を傾げている。


「寝ぼけていたのかの。ほら、早くお布団でおやすみ。トイレは寝る場所じゃないからのう」


「あ、う、うん。ありがとう、おじいちゃん」


おじいちゃんが来てくれなかったら、私はあの幽霊に殺されていたかもしれない。


そう思って、立ち上がってお礼を言ったけど、おじいちゃんはよくわかっていないようだった。


部屋に戻って、震えながら布団に入ったけれど……こんな事はもう、二度と起こらないでと祈ることしか私にはできなかった。
< 42 / 231 >

この作品をシェア

pagetop