おうちかいだん
「……それで、さすがにおかしいと思った母親はトイレの改装を決意してね。新しいトイレになってからは、女の子は恐ろしい目に遭うことはなくなったみたいだよ」
稲葉くんが話し終える頃には指を絡ませていて、もう片方の手で私の手の甲を愛おしそうに撫でていた。
「結局、トイレの幽霊達は何だったの? 何か恨みを持っていたから……女の子に伝えたいから出ていたんじゃないの?」
「ふふ。実はこの話には、関係している事件があってね。家が民宿だったって言ったでしょ? ずっと昔、海水浴客を狙った殺人事件があったんだ。犯人はこの家で殺人を行い、便槽に捨てた。そして自分で便層から死体を汲み取って、別の場所に捨てたってわけさ」
そんな話をしているにも関わらず、稲葉くんは私の手を撫でて嬉しそう。
もうすぐ太陽が沈む。
黒と緋色のコントラストも終わり、完全なる黒の世界が訪れる。
稲葉くんの行動は、それを待っているかのようで。
「稲葉くん、今の話とても面白かったよ。きっと何度も話してるんだろうね。私が初めてじゃないんでしょ?」
少し意地悪をしたくてそう尋ねると、稲葉くんは優しく微笑んだ。