おうちかいだん
「よし……やるか」


浴槽から出て、洗い場でシャワーを出した私は深呼吸をしてシャワーチェアに座ると、正面の壁にある鏡に目を向けた。


この時点では怖いことなんてなにもない。


いつも通り、頭と顔を洗うのを怖がっている私が映っているだけだ。


シャワーヘッドを握って、目を閉じないように後ろ髪から徐々に頭頂部、サイド、前髪と、お湯をかけていく。


お湯くらいならまだいいんだ。


目に入ったとしてもなんとか開けていられるから。


でも、ここで目に入る「道筋」を作ってしまうと、シャンプーの泡がそこを伝って目に入ってしまうんだよね。


シャワーヘッドを壁にかけ、今度はシャンプーを手に付けて髪に馴染ませる。


少し上を向いて、髪を全部後ろに流せば目に入ることもない。


慣れもあって簡単に終わる……なんて、そうだったらどんなに気が楽だろう。


一度いると想像してしまったら、あいつは何がなんでも私の目を閉じさせようとしてくるんだ。






ゴポッ、グジュッ……。






そんなことを考えていると、今まで調子よく出ていたシャワーのお湯が、突然咳き込んだように出が悪くなり始めた。
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