おうちかいだん
そう言うと、「だったら頭と顔は洗面所で洗えば?」という友達もいたけど、私からすればどちらも同じこと。


そして、目を瞑りさえしなければ、このお風呂の時間は私にとってはとても楽しいものだったから。


「ふぁー……生き返るわぁ」


身体を洗った後、ゆっくりと浴槽に身体を沈めて、少し熱めのお湯がチクチクと肌を刺激するのを楽しむ。


少しおっさんくさい言葉を、唸るように言うのが何よりも幸せを感じるんだよね。


まだ洗っていない髪の毛と顔。


もう洗い終えた後だったら、どれだけ幸せだったことか。


「……いつだったかな。あの話を聞いたのは」


私がお風呂場で目を瞑るのが怖くなったのは、誰かからこんな話を聞いたからだ。








「お風呂場で頭や顔を洗ってる時、目を瞑ると幽霊が背後に現れるんだよ。怖いと思っちゃダメ。幽霊を想像してもダメ。その時にはもういるから」









忘れよう忘れようと思っても、頭や顔を洗う時に思い出してしまうから忘れることなんてできない。


そして、この話を思い出すということは、確実に幽霊のことを考えてしまっているわけで。


誰が言ったかわからないけれど、この話をした人を思い出したら、一発ひっぱたいてやりたいとまで思うよ。
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