おうちかいだん
ついさっき、浴槽から出たばかりだというのに、背中を冷たい手で撫でられているかのようなおぞましい悪寒。


十分温まっているはずなのに、身体が不自然に震え始める。


いる……見えないけどわかる。


間違いなく私の後ろに、何かがいる。


シャワーのお湯の噴出音と、床で弾ける音だけが響く浴室。


目を閉じてしまって真っ暗な中で、想像するなという方が無理だよ。


怖い……怖いけど、こうなったらもう仕方がない!


何も起こらないうちに、急いで頭を洗ってしまおうと、両手で髪をかき上げて乱暴に洗う。


だけど、その時にはもうすでに、あいつはいたのだということを知った。


慌てて動かしていた手を、違和感を覚えて止めてみたけれど……なぜか動いている手がある。


「え……な、なんで……今まではこんなこと……」


お風呂場で両目を閉じると怖いことが起こる。


それでも今までは、せいぜい悪寒を感じるだとか、電気が少しの間消えるとか……背後に人影が見える程度だったのに。


右手と左手の間に、もう一本手があるのを感じて、私は声にならない悲鳴を上げた。


身体がそれを拒絶して、右手でその手を払い除けようとするけど、動いているのがわかるのに、全く触れることが出来なかったのだ。
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