エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 な、なんで怒ってるんだろう。柳澤さん、いったいなにを言ったの?

 座ったまま身をすくませて盛大に怯えていたら、ふと光希さんの声がした。

「ねえ、花純さん怖がってるよ? お兄ちゃんの言葉が足りないせいでしょ。ちゃんと安心させてあげなよ。自分の両親を反面教師にしてさ」

 彼女のその言葉で、時成さんがそばにいることを知る。鼓動の音がますます忙しなくなり、心臓が口から飛び出しそうだ。

「……わかってる。ちゃんとするから、お前はあっちに行ってろ」
「はーい」

 光希さんが素直に返事をすると、彼女と入れ替わるようにして、時成さんが椅子を引いて座った。その音だけでビクッと肩を跳ねさせた私に、時成さんがふっと苦笑を漏らす。

「そんなに怖がるな。別に怒ってるわけじゃない」
「本当ですか?」
「ああ。つーかそろそろ気づけよ。……俺がこの顔するのは、だいたい照れてる時だって」

 彼はどこかきまり悪そうに、ぼそぼそ白状した。

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