エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
さっきの件で気を遣っているらしい。私の返事を待ってから彼は静かにドアを開け、洗面所に入ってきた。
ジャケットとネクタイは置いてきたらしく、第三ボタンまで開けたシャツにスラックスという服装だ。
シャツの襟から覗く鎖骨やごつごつした喉仏にドキッとして目を逸らし、私は鏡に向き直る。
すると今度は鏡の中で時成さんと目が合い、ますます胸が早鐘を打った。
「貸せ、ドライヤー」
「えっ?」
「乾かしてやる」
ぽかんとしているうちに、時成さんは私の手から無理やりドライヤーを奪ってスイッチを入れた。
温かい風に巻き上げられた髪に、時成さんが骨ばった指を通す。そうして毛先まで優しく梳かれると、無性にくすぐったい気分だった。
「あの、どうして急に髪を……?」
おずおず彼を見上げて尋ねる。
時成さんは私の髪を見つめて淡々とブローを続けながら、口を開く。
「急じゃない」
「急じゃないって……でも、初めてですよね? 髪を乾かしていただくの」
「実際にやるのはな」
彼の短い返事では頭の中に疑問符が増えるばかりで、私の眉根が中央に寄る。
鏡を見てそれに気づいた彼は、ドライヤーを切って洗面台に置き、背後から私の肩に腕を回し、ギュッと抱きしめてきた。