エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
えっ? なんで突然――。
ドキドキしながら体を硬直させていると、彼が私の髪に唇をくっつけながら話す。
「勝手にひとりで思ってたんだよ。風呂上がりのお前の髪、乾かしてやりたいなって」
時成さんらしからぬ、穏やかで素直な口調。鏡に映る彼の瞳も、いつもよりどこか甘くて優しげだ。
「どうしたんですか? 時成さん、なんだかいつもと違うみたい」
「今日の料理教室でお前が思い悩んでる様子だったって、柳澤に連絡もらって……反省したんだよ。お前とちゃんと向き合ってなかったこと」
彼はそう言って、ますます私を抱きしめる腕に力を込めた。少し苦しいくらいだけれど、今はその窮屈さがうれしかった。
おそらく、柳澤さんは伏見くんの嘘を鵜呑みにせず、そこから私の心情をうまく汲み取って伝えてくれたんだろう。
こちらからお願いしたわけじゃないのに、よく気が回る人だな。
「なぁ」
「はい」
「……腹減った」
本当に空腹そうな頼りない声音に、思わずクスッと笑みがこぼれた。
こういう時の時成さんって、子どもみたいでかわいい。