エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
彼は途端にふっと表情をやわらげ、私を見つめて言った。
「お前の料理はすごいな」
「いえ、そんな……〝すごい〟は言いすぎでは?」
「食べただけで、いかに俺のことを考えながら作ったのかが伝わってくる」
時成さんはそう語り、またひと口お茶漬けを食べて「うまい」と噛みしめるように呟く。
「ロコモコの時もそうだった。買い物しながら俺の好みをリサーチしたり、ストレスの軽減に効果があるからと、牛だけの挽肉より合挽肉を選んだり。そんなふうに作ってもらった料理の味は、やっぱり格別だった。カフェなんかが勝てるわけがない」
どこか自慢げに話す時成さんに、胸がじーんとした。あの時、勝敗は買い物の時点で決まっていたと彼が言っていたのは、そんな理由からだったんだ。
「食べる人を思って、真心を込めて料理をする。私にそれを教えてくれたのは、両親でした」
私はそう切り出し、料理研究家を目指したきっかけについて初めて彼に話した。
大学教授として忙しくする父を母の献身的な料理が支え、お互いに感謝の気持ちを忘れずに支え合っている、そんな両親が理想の夫婦なのだと。