エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「お願い、お父さん。司波さん、お仕事が忙しくてまともな食生活を送れていないそうなの。私、そんな彼を自分の料理で支えたい。お父さんの研究を、陰ながらずっと支えてきたお母さんみたいに」

 父は平日大学での仕事を終えて帰宅した後、また休日も、自室で論文にかかりきりになることが多い。なので、我が家には家族そろって食事をする習慣があまりない。

 しかし母はそんな父に不満を言うでもなく、その時の食事を、片手で食べられるおにぎりやサンドイッチ、ひと口サイズの揚げ物にアレンジし、寒い日にはスープを添えて、毎日父の部屋に運んだ。

 父はそのことにとても感謝していて、いつかの母の誕生日に『母さんのおかげで、俺は家庭を持ちながらも研究者でいられる。ありがとう』と伝えていた。

 今どき珍しい古風な夫婦かもしれないが、私は素直に自分の両親を素敵だと思う。

 料理研究家になろうと思ったのも、毎日の食事を通して絆を深めるふたりを見てきたからだ。

< 40 / 233 >

この作品をシェア

pagetop