エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「ありがとね花純。そんなふうに言ってくれて」
照れくさそうに笑う母の横で、父が諦めたようにため息をつく。
「一度言い出したらきかないからな、花純は……」
「そうよお父さん。初めてテレビに出るお話をもらったときだって、『うちの娘は見世物じゃない!』と怒るお父さんに臆することなく『私は私の料理をたくさんの人に伝えたいの』って言って、花純は絶対に譲らなかったものね」
私に味方する母の言葉を受け、父は数秒間目を閉じてなにか考える。そして、腹を決めたように私を見た。
「わかった。その代わり、早めに司波くんをうちに連れてきなさい。恨み言のひとつでも言ってやらなきゃ気が済まない」
「お父さん、ありがとう!」
「とうとう花純もこの家を巣立つときが来たってことだな」
父はそう呟くと、テーブルの湯飲みに手を伸ばしてお茶をずずっと啜り、寂しげな顔をした。
正直、この家で両親に守られながら、仕事だけに集中できる環境はとても快適だった。
でも、いつまでも甘えてばかりはいられない。家を出る動機はどうあれ、これをきっかけにしっかり自分の足で立たなきゃ。