エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 いつもなら授業の最後に、『私のレシピはあくまで基本の味。あとは、みなさんがこの料理を作ってあげたい方の好みに合わせて、自由にアレンジしてください』というお決まりのセリフで締めるのに、今日は『お疲れさまでした!』と言うのが精いっぱい。

 ようやく落ち着けたのは、後片付けや掃除を終え生徒たちが全員帰ってからだった。

 メインのキッチンでお茶を淹れ、アシスタントのふたりとともに、今日の授業の記録や所感をノートにまとめる。

「花純さん、チェックお願いします」

 一番に仕事を終えたのは紗耶香ちゃんだった。

「さすが早い。預かってゆっくり見るね。お疲れさま」
「じゃ、お先に失礼します」

 素早く帰り支度を済ませ、紗耶香ちゃんが教室を出ていく。ドアが閉まる音がして、再び静寂が訪れた。

 かと思ったら、次の瞬間閉まったばかりのドアが勢い良く開いて、紗耶香ちゃんが戻ってきた。

「どうしたの紗耶香ちゃん。忘れ物?」
「そうじゃなくて、花純さん! 廊下で待ってますよ、婚約者さん!」
「えっ?」

 司波さんなら同僚の柳澤さんと一緒に教室を出て行くところを見たけれど……彼と一緒に帰ったんじゃなかったの?

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