エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
仕事の途中だが、とりあえず椅子から腰を上げてドアに近づく。
「ほら、あそこ」
ふたりでドアからひょこっと顔を出すと、紗耶香ちゃんが小声で教えてくれる。
司波さんは廊下の少し離れた場所で壁に背中を預け、涼しい顔でスマホを眺めていた。
ホントにいた……。なんで? とくに約束はしていなかったはずだけど。
「司波さん」
遠慮がちに声を掛けたら、彼はスマホをポケットにしまって視線を上げた。
「終わったのか?」
「いえ、まだですけど……あの、私を待っているんですか?」
「ほかに誰がいる」
「でも、どうして?」
本当にわからないので、首を傾げながら尋ねる。すると司波さんの口もとからかすかな舌打ちが聞こえたので、思わず肩をすくめた。
そんなあからさまに不機嫌な態度をとらなくたって。
「……お前があんな大勢の男に愛想振りまいてるからだろうが」
私の目を見ずにボソボソと呟いた司波さん。大勢の男って、料理教室の生徒のこと?
彼の言い分を聞いても、頭の中の疑問符はますます増えるばかりだ。