花のような君へ
プロローグ
桜が散る季節になった。


俺の手には綺麗に咲く花束。
その花束を握りしめ、風と共に散る桜に押されるかのように丘を登る。




「今年も綺麗な桜が咲いたんだよ」




登った先にあるのは小さなお花畑。
そのお花たちに囲まれ、建っているのは小さなお墓。

俺はそのお墓に花を添える。




「今日はいい天気だ。お前もそう思うだろ?茜」




返事は当然返ってこない。
だけど、俺の言葉に応えるかのように周りに咲く花が揺れた。



今日俺は彼女の好きな花を運ぶ。


目を瞑ると蘇ってくる彼女との思い出。



無邪気に笑う君

寂しがり屋なのに強がる君

拗ねた顔の君

怒る君



その全ての君の表情が今も鮮明に覚えている。


決して消えることのない君と過ごした日々は、

俺にとって大切で幸せだった───。

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