勇者がうちにやってきた▼【完】
「なんで開いてるの!?」


慌ててパーカーのチャックを閉める。
まさかコイツ、私にいかがわしいことをしたんじゃ?


「わりぃ、人工呼吸する時に胸元の動き確認したくてさ」
「へ?」
「まさかホントに人工呼吸で助かるなんてなー、すげーや!」


ハハハ、と頭をかきながら笑う近藤。
私は一瞬頭の中が真っ白になったけど、落ち着いて思考を巡らす。
つまりなんだ、溺れた私を引き上げ、人工呼吸で助けてくれたのは近藤というわけか。
それすなわち、近藤の唇が私の唇に触れたということを意味していて。

そう理解するや否や、着火されたように全身が熱を帯びるのを感じた。
どうしよう、そんなことされちゃ、もう近藤のこと普通の男子として見れないじゃんか。
私が羞恥心で爆発しそうになっていると、


「よかった、目が覚めたんですね」


岩の陰からあーくんが海草を持って現れた。
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