【完】黒薔薇の渇愛




慌てて目の下を指で触ったって、もう遅い。

何もかもバレバレ、隠したって何の意味もない。


桜木は分かってて言ってるから、余計にたちが悪い男だ。
優しくなっても、その性格の悪さは全然変わっていない。



「天音ちゃん、連絡先交換しよ」


「えっ、なっ、なんで?」


「なんでって言われても、俺がしたいから?」


自分からは絶対に言えないようなことを、桜木は軽く言ってくれるから
嬉しいって気持ちを隠して、桜木と連絡先を交換した。


桜木は私の連絡先が入っているかを確認すると、スマホ画面を真っ黒にし、れみ子たちに目を向ける。



「何かあったら俺に言ってねー、天音ちゃん」


「……うん」


「天音ちゃんにひどい事する奴には、俺が罰を与えてあげる」


私に話しかけながらも、堂々と桜木の目はれみ子たちを捉えている。


またいじめられてるなんて言ったら、呆れられるんじゃないかって怖かったのに……。


桜木から差し出してくれるその手に、ひどく安心感を覚えた。


甘えても、いいんだって。


桜木の目だけで屈してしまったれみ子たちは、悔しそうにその場から逃げていく。


ひどい脱力感を覚え、倒れそうになった私の肩を、もう一度桜木が掴む。



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