【完】黒薔薇の渇愛
「さっ、桜木……」
名前を呼んでないと不安になる。
カラオケルームから出ると、私たちの騒ぎを聞き付けた他のお客さんと
さっき優理花さんを連れていった、多分逢美のメンバーが立っていた。
「なぁに」
桜木は目だけで逢美のメンバーに合図すると、そのまま青色に光る薄暗い廊下を突き進む。
「どこにも……行かないよね?」
「どっか行きたいところでもあるの」
「違う桜木が……」
「俺はここにいるでしょ。」
伝わらない。
そういう事が言いたいんじゃない。
縮まったはずの距離が、急に距離をとられたみたいだ。
会った時より全然優しいのに……なんだろうこの違和感。
妙に優しい桜木が怖い。