【完】黒薔薇の渇愛
震える声の意味を、桜木には伝わっているんだろうか。
彼の目は大きく見開かれ、まるで珍獣でも見るかの様に私と目を合わせる。
桜木は「ハッ」と鼻で笑うと、掴んでいた男の胸ぐらから雑に手を離した。
「そーいうとこ、好きだよ天音ちゃん」
「す……っ!?」
「けど、お人好しも大概にしないと、いつか痛い目見ちゃうよー。
って、天音ちゃんいっつも痛い目見ちゃってるか、可哀想な子」
「……なんでそうハッキリ言うかな、本人の前で」
落ち込む私を見てケタケタ笑う桜木が、手首を掴んできた。
引っ張られ歩き出すと、水浸しの床を踏みつける度
現実から目が離せなくなる。
大丈夫……。
桜木は助けてくれたもん。
なにも怖いことなんかないはずなのに。
どうしてだろう……胸がザワついてしょうがない。