【完】黒薔薇の渇愛






急に桜木の胸板が迫ってくる。


そのまま後ろに倒れこむ様に、桜木は床に手をつけ私に覆い被さった。



「な、に」


「怯えてんのー?かわいーね。
 いいよ、俺君の彼氏でも」


「……だから嘘だってば」


「天音ちゃんは俺のこと振り回すからねー。
 ずっと見張ってないと俺が疲れちゃうでしょ?
 ずっと見張るなら、恋人って関係適役だと思うんだよね」


「……っ」


どう反応していいか分からなくて
顔を横に向ければ、無意識に奏子の方を見てしまう。


そんな私を見下した桜木は、目を細めつまらなさそうに私の首筋に顔を埋めるから。


らしくない、「ひゃ……っ」と女の子らしい高い声がでる。



「元彼なんて見ちゃダメでしょ。
 俺のこと見てほしいなー」


「……っ、ねぇ!謝るから、こんな冗談やめて」


「冗談?なにそれ不味そう。
 俺はいつだって本気だよ、天音ちゃん」



するりと、桜木が私の鎖骨部分に手を押し当ててくる。



「あーあ……胸触ったらセクハラになっちゃうから、鎖骨で我慢してあげてるのに」


「……」


「ここまで心の振動伝わってくるなんて。
 ちょっとイヤらしいんじゃないの天音ちゃん」


「……っ、」


「こんなんでドキドキしてたら、俺の彼女役なんかつとまらないっしょー。
 もっと激しいよ俺。どう?愛されてみる??」


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