キミと、光さす方へ
ビクリと体を震わせて振り向く。


勇人はジーンズに白いTシャツ、それに黒い上着姿で近づいてくる。


「お、おはよう……」


あたしはぎこちなく笑う。


「あれ、泉は?」


「それがね……」


あたしは泉から来たメッセージを勇人へ見せた。


「風邪? まじかよ」


「そうみたいだ。だから今日はさ――」


『やめておかない?』


そう言う前に、バスのエンジン音が聞こえてきていた。


振り向くとあたしたちが乗る予定のバスが停車したところだ。


「お、これだな。とにかく乗ろうか」


勇人は当たり前のようにそう言い、歩きだす。


「え、ちょっと待って」


あたしは慌ててその後を追いかけた。


「い、泉はどうするの?」


「風邪なんだから仕方ないだろ?」


勇人はそう言うと、あたしを先にバスに乗せた。


仕方ないってそんな……。


「ラッキー。一番後ろが開いてる」


勇人は子供のようにはしゃいだ声でそう言うと、バスの後方へと歩き出した。


そしてバスのドアはあたしの後方で音を立てて閉まったのだった。
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