キミと、光さす方へ
あたしはお姉ちゃんだから、もう自転車に補助輪は必要なかった。


弟がたどたどしく自転車に足を乗せるのを確認してから、こぎ出した。


乗り始めるまでは時間がかかっても、乗ってしまえばあとは楽。


補助輪がついているからこける心配もない。


そう思って、あたしは振り返りもせずに前を走った。


風が気持ちよくて、早く公園で遊びたくて、グングンスピードを上げる。


そして右手に坂道が見えた。


普段はお母さんたちから「一旦停止して確認するのよ」と言われていたけれど、あたしは横目で坂道を確認しただけですぐに通り過ぎていった。


弟も付いてきている。


そう思った直後のことだった。


キキキーッ!!


自転車のブレーキ音がして、あたしは止まった。


それが、悪夢の始まりだった……。


「弟は病院に運ばれたけど、そのまま死んでしまったの」


あたしはすべてを伝えて、大きく息を吐きだした。


目の前には赤い屋根の家がある。


自分の口から当時のことを語ったのは泉に伝えた時と、今だけだった。
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