キミと、光さす方へ
あたしの帰りが遅いのはいつものことだから、お母さんも心配することはない。


安心してノートを見つめていた時だった。


「は? なんでいんの?」


そんな声が聞こえてきてハッと息を飲んで顔をあげた。


そこに立っていたのは体操服姿の勇人で、目を丸くしてあたしを見ている。


「あ、えっと……数式を覚えてから帰ろうと思って」


あたしはドキドキしながら返事をした。


嘘はついていない。


「もう誰もいないのにか?」


勇人は大股に近づいてくる。


咄嗟に逃げ腰になるが、ここで逃げるのは逆に変だと思って動けなくなってしまった。


「そ、そうだよ。昨日言ったじゃん、学校で勉強すれば先生に質問できるって」


「そりゃそうだけど」


勇人はそれでも納得できない顔で首をかしげている。


「それよりも勇人は部活なんじゃないの?」


あたしは勇人の体操着姿を指さして言った。


「あぁ。またスマホを忘れたんだよ」


言いながら勇人は自分の机からスマホを取り出す。


その様子を確認しながらあたしは内心本当にただ忘れただけだろうかと考えた。
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